室蘭やきとり。
北海道へ何度も足を運びながら、なぜかまだ本場で食べられていない料理がある。
室蘭は、札幌から函館へ向かう途中だ。
電車も停まるし、決して行けない場所ではない。だが、途中下車して室蘭やきとりを食べ、そこから再び移動するとなると、なかなか難しい場所。
しかし、そう考えているうちに、毎回そのまま函館まで運ばれてしまうのである。
室蘭やきとりが、追いかけても追いかけても逃げてゆく月になるのだ。
そんなある日、札幌の白石区を歩いていると、思いがけない文字が目に飛び込んできた。
「室蘭やきとり」
しかも、室蘭の老舗「やきとりの一平」で修業した店主が、その味を受け継いだ店だという。
札幌で室蘭に途中下車できるのか……?
血沸く血沸く🎵

室蘭やきとりとは、豚肉とタマネギを甘辛いタレで焼き、洋がらしをつけて食べるものだ。
さらに、殻ごと焼かれた室蘭産うずら、肉汁がしたたるラムつくね、カリッと焼かれたぼんじりまで現れる。
今回は、札幌の中心部から少し離れた場所で見つけた、本場の流れを受け継ぐ室蘭やきとりの店を紹介しよう。
札幌・白石区「室蘭やきとり 雷音」とは
「室蘭やきとり 雷音 白石店」は、札幌市営地下鉄東西線・南郷18丁目駅から歩いて向かえる場所にある。

すすきのや札幌駅周辺のような繁華街ではなく、住宅や地元向けの店が並ぶ白石区の一角だ。自分も最初から、この店を目指していたわけではない。
周辺にあったコカ・コーラの見学施設へ行った際、たまたま歩いていて「室蘭やきとり」の文字を発見したのである。
こんなところで?
北海道グルメとの出会いは、意外な場所に潜んでいるものだ。店へ向かったのは、まだ営業開始前。建物にはほとんど明かりがなく、あまりにも暗い。
「もしかして今日は休み?」
そんな不安を抱えながら少し待っていると、営業時間になった瞬間、赤い提灯へ火が灯ったのである。

よかった!やっていた!!
暗闇の中に「雷音」の文字が浮かび上がる。この瞬間、札幌で室蘭やきとりを食べる道が開かれたのである。

雷音のルーツは、昭和25年創業の室蘭の老舗「やきとりの一平」。
その店で修業した店主が、受け継いだ味を広めるために江別市大麻で「雷音 原店」を開き、2017年には2号店となる白石店が誕生したという。

店内に飾られた写真にも、「やきとりの一平 同門の絆」と書かれている。ただ室蘭やきとりを名乗っているのではない。
しっかりと本場からつながった一軒なのである。
「室蘭やきとり 雷音」へ入店
予約はしていなかったが、一人であることを伝えると、無事にカウンターへ案内してもらえた。

入った直後はまだ客も少なく、店内は静かだった。木を基調としたカウンターには、室蘭やきとりの絵や店の歴史が飾られている。
観光客へ向けて作られた郷土料理店というより、地元客が普段から酒を飲みに来る居酒屋といった雰囲気なのだ。

しかし、しばらくすると状況が変わってくる。一組、また一組と客が入り、気づけば店内はどんどんにぎやかになっていった。
最初の静けさは、嵐の前だった。
予約せずに入れたのは、一人だったことと、開店直後に来たことが大きかったのかもしれない。札幌中心部から少し離れた住宅街にありながら、時間になれば地元客が集まってくる。
その時点で、すでに期待値は上がっていた。この日は寒かったので熱燗を注文して待つ。
まず運ばれてきたのが、このお通し。

油揚げと餅に、たっぷりのチーズを重ねて焼いたものだろうか。そこへネギと鰹節が乗っている。
ウマい!
これは強いぞ!!
香ばしく焼けた油揚げ。伸びるチーズ。そして、もちっとした食感。
熱燗に合う…

お通しがウマい店は、その後の料理にも期待してしまう。これはもう、室蘭やきとりが届く前から勝負が始まっているのである。
雷音で本場仕込みの室蘭やきとりを実食
室蘭やきとりの基本は、鶏肉ではない。豚肉とタマネギを串に刺し、甘辛いタレで焼き上げ、洋がらしを添える。
名前は「やきとり」だが出てくるのは豚。
豚のコメカミを出す埼玉東松山名物「やきとり」を彷彿とさせる。
まず注文したのは、室蘭やきとりと殻付きうずら。

見た瞬間から、タレの照りがスゴい。豚肉は一切れが大きく、間にはタマネギ。そこへ洋がらしが添えられている。
さっそく、豚肉へからしをつけていただく。

ウマい!!
濃く甘辛いタレをまとった豚肉から、脂と肉汁が広がる。その濃さを、洋がらしの辛さが一気に切っていく。
タマネギの甘みまで加わり、口の中では豚、タレ、からし、タマネギが完全に一つになっていた。
これが室蘭やきとりか……!酒が消える…!!
本場の味を受け継いでいるという歴史を抜きにしても、単純に一本の串としてめちゃくちゃウマかった。
そして、もう一つ食べておきたかったのが殻付きうずら。

これは雷音だけの変わり種ではない。師匠筋にあたる室蘭の老舗「やきとりの一平」が生み出した、室蘭産殻付きうずらの炭火焼き。
室蘭うずら園から仕入れた卵を、殻ごと秘伝のタレにつけて炭火で焼くという、なかなか豪快な料理だ。
つまり、豚肉とタマネギの室蘭やきとりだけでなく、この殻付きうずらまで札幌で体験できるのである。
さっそく、殻ごとかじってみる。

パリッジャリッ!
卵のやわらかさと一緒に、香ばしく焼かれた殻の食感が押し寄せてくる。殻は思ったほど硬くなく、秘伝のタレともよくなじんでいる。
室蘭を食べている感めちゃ強。
正直に言えば、この独特な殻の食感は好みが分かれるだろう。さらに一人で二本となると、なかなかの殻ボリュームである。珍しさと土地の体験としては最高。
しかし、一人飲みなら、まず一本から試してみるのがベターだろう。
そのとき…メニューを見ると二本単位で書かれた串が多いが、小さく「一本からでも注文できます」と記載されていたのである。
先に教えてくれ!
いや…しっかり書いてある…見落としていた自分が悪い。一人飲みなら、最初から一本ずつ注文したほうがいい。
ここからは、一本注文へ作戦変更。次に選んだのが、ラムつくねである。

届いた姿は、つくねというより串に刺さった小さなハンバーグ。表面はタレで艶々に輝き、かなりの存在感がある。
箸を入れると、中から肉汁があふれ出す…
これはヤバいぞ……!

羊肉の風味はしっかりあるが、クセが強すぎるわけではない。食感はふっくら。噛めばラムの旨みと脂が、口いっぱいに広がっていく。
絶品ラムハンバーグと言ってもいいだろう。すすきのの「HIGE」を思い出す。
ジンギスカンとは違う方向から、北海道らしさが襲ってくる。室蘭やきとりを食べに来たはずなのに、ここでラムつくねに心を持っていかれるとは思わなかった。
ここにはちゃんと鶏肉もある。ぼんじりを塩で注文。

外側はカリッ。噛めば、中から脂がジュワッ。
カリジュワである。
タレの室蘭やきとりを食べたあとに、塩のぼんじりを挟む。この切り替えが非常にいい。
最後にシメでやはりレバー。これを食べねばならない…!

豚の濃厚なレバーの味と、タレが絡み合い。酒が進むことは間違いなし。
〆にぴったりの濃厚さ!
雷音は、室蘭やきとりだけの店ではない。
タレを受け継いだ本流の豚串を中心に、ラムつくねや鶏串、一品料理まで楽しめる、しっかりとした居酒屋なのである。
「室蘭やきとり 雷音」を正直に総評
札幌で室蘭へ途中下車。

そんな感じだ。
室蘭まで足を延ばさなくても、老舗「やきとりの一平」の流れを受け継ぐ室蘭やきとりを札幌で味わえる。
甘辛いタレをまとった豚肉。間に挟まれたタマネギ。そして、たっぷりの洋がらし。この組み合わせは、文句なしにウマかった。

さらに、一平から受け継がれた殻付きうずら。

肉汁の詰まったラムつくね。カリジュワに焼かれたぼんじり。濃厚な豚レバー。

お通しの時点から最後まで、料理にほとんど隙がない。

一方難点も…すすきのや札幌駅から気軽に歩いて行ける場所ではない。串や酒を好きなだけ注文すれば、激安居酒屋のような会計でもなくなる。
殻付きうずらも面白いが、独特の食感は好みが分かれるだろう。だが、遠さも値段も分かったうえで訪れるなら、満足度はかなり高い。

安いからコスパがいいのではない。
払った金額以上に、「札幌で本流の室蘭やきとりを食べた」という体験が残るからコスパがいいのである。
飲んでいる間にも、地元客が次々と集まってきた。暗闇の中で見つけた店は、入ってみればしっかりと雷のような衝撃を残すだろう。

室蘭へ行きたい。だが、なかなか途中下車できない。
そんな人はまず、札幌・白石区で室蘭やきとりを体験してみてほしい。
ごちそうさまでした!
店舗情報
- 店名:室蘭やきとり 雷音 白石店
- 住所:北海道札幌市白石区栄通19丁目3-3
- 営業時間:火〜土 17:00〜23:00/日 17:00〜22:00
- 定休日:月曜日
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